五會念佛作法


 この作法は、明治43年に刊行された本願寺派の旧声明集である『梵唄集』所載の「五會念佛略法事讃」に依って作られたもので、『龍谷唄策』にも「五会念仏略法事讃」として見える。
 「五会念仏」は、中国唐代に行われた勤行式で、唐代の僧法照が制したものである。念仏を五段階に分けて唱えるところから「五会念仏」の名がある。『宋高僧伝』二十七に、法照が大歴元年(766)4月に南岳弥陀台般舟道場で90日の念仏三昧を修しているとき、禅定の境地に入って阿弥陀如来から授けられ、同5年(770)に山西省五台山に竹林寺を建立して五会念仏を広めたとしている。「五会」について法照は『浄土五会念仏略法事儀讃』本に「五とは是れ数なり、会とは集会なり。彼の五種の音声は緩より急に至りて唯仏法僧を念じて更に雑念なし。念とは則ち無念にして仏不二門なり。声とは則ち無常第一義なり。故に終日仏を念ずれども恒に真性に順じ、終日生ぜんことを願ずれども常に妙理に使す」とし、さらに五は五濁煩悩を離れ、五苦を除き、五蓋を断ち、五趣を截り、五眼を浄め、五根を具し、五力を成じて菩提を得、五解脱を具して速やかに能く五分身法を成就することをあらわすとしている。

(1)三奉請

原文奉請彌陀如來 入道場 散華樂
奉請釋迦如來 入道場 散華樂
奉請十方如來 入道場 散華樂
和訳弥陀如来を請じたてまつる、道場に入りたまえ。
釈迦如来を請じたてまつる、道場に入りたまえ。
十方の如来を請じたてまつる、道場に入りたまえ。
出拠善導大師 『法事讃』上巻「行道讃梵偈」『真聖全』1・575-4
備考『梵唄集』所載の「五会念仏略法事讃」の「散華楽文」に依り、「三奉請」と改称した。
『梵唄集・龍谷唄策』所載の「五会念仏略法事讃」では、「散華楽文(三奉請)」までに、「総礼伽陀(先請伽陀)・云何梵・云何唄・讃請文」が入り、「散華楽文」の本文は「奉請釋迦如来入道場散華楽・奉請十方如来入道場散華楽・奉請弥陀如来入道場散華楽・奉請観音勢至諸大菩薩入道場散華楽」である。


(2)念仏

原文南无阿弥陀佛 南无阿弥陀佛 南无阿弥陀佛
南无阿弥陀佛 南无阿弥陀佛
和訳
出拠
備考『梵唄集』所載の「五会念仏略法事讃」の「五会念仏」をそのまま採用。譜については二門偈作法の「念仏」参照。なお『声明品集』に「五会念仏」として十句の念仏が見えるが、譜は現行のものではない。
「五会念仏」は、念仏を第一会では平声緩念(平調)、第二会では平上声緩急念(平調)、第三会では非緩非急念(下無調)、第四会では漸急念(双調)、第五会では四字転急念(黄鐘調)の五段階に分けて唱えるもので、中国唐代の僧法照が制した勤行式である。本願寺派のこの念仏は「第一会平声緩念」である。


(3-1)誦讃偈(甲)

原文如來尊號甚分明 十方世界普流行
但有稱名皆得往 觀音勢至自來迎
和訳如来の尊号ははなはだ分明なり、十方世界にあまねく流行せしむ。
ただ称名するのみあつてみな往くことを得、観音・勢至おのづから来り迎えたまふ。
出拠法照禅師 『五会法事讃』『称讃浄土経』に依りて造られた偈
引用宗祖 『唯信鈔文意』『真聖全』2・621-9/『註釈版』699-10
備考『梵唄集』所載の「五会念仏略法事讃」の「誦讃偈」中の最初の甲様の句を、本文・譜ともにそのまま依用したもの。『梵唄集』の「五会念仏略法事讃」には、甲・甲・乙・乙・甲の五種がある。譜については浄土法事讃作法の「誦讃」参照。なお『声明品集』に、現行の甲様「如来尊号…」の御文が「尊号讃」として見える。


(3-1)誦讃偈(乙)

原文五濁修行多退轉 不如念佛往西方
到彼自然成正覺 還來苦海作津梁
和訳五濁の修行は多く退転す。念仏して西方に往くにはしかず。
かしこに到れば自然に正覚を成ず。苦海に還来して津梁とならん。
出拠宗祖 『教行信証』行巻
『阿弥陀経』に依りて造られた頌
『真聖全』2・24-8/『註釈版』172-11
備考『梵唄集』所載の「五会念仏略法事讃」の「誦讃偈」中の最初の乙様の句を、本文・譜ともにそのまま依用したもの。なお『声明品集』に、現行の乙様「五濁修行…」の御文が「津梁段」として見える。


(4)莊嚴讃

原文彌陀願行廣無邊 非濟群生不盡憐
惣欲化令歸本國 衆生罪業共無縁
 (以下略)
和訳
出拠法照禅師 『五会法事讃』下巻
備考『梵唄集』所載の「五会念仏略法事讃」の「荘厳讃」を、本文・譜ともにそのまま依用したもの。『梵唄集・龍谷唄策』の「五会念仏略法事讃」には、「荘厳讃」の前に「嘆仏讃」が入る。「荘厳讃」の元の譜は「法事讃」のものである。なお『声明品集』にも「極楽荘厳讃」として見える。
この譜は「正信偈」行譜の「善導独明仏正意」からの元譜である。また本山のみで依用される「正信偈」真譜は「荘厳讃」の譜で唱えられる。


(5)回向

原文願以此功徳 平等施一切
同發菩提心 往生安樂國
和訳願はくはこの功徳をもつて、平等に一切に施し、
同じく菩提心を発して、安楽国に往生せん。
出拠善導大師 『観経疏』玄義分 「帰三宝偈」終わりの4句 『真聖全』1・442-2/『註釈版』1453-1 
備考『梵唄集』所載の「五会念仏略法事讃」の「回向」を、本文・譜ともにそのまま依用したもの。譜については広文類作法の「回向」参照