淨土法事讃


 この作法は、明治43年に刊行された本願寺派の旧声明集である『梵唄集』所載の「如法念佛(にょほうねんぶつ)作法」を改訂縮小して作られたものである。「如法念仏作法」は『龍谷唄策』にも収められており、善導(623〜681)の「転経行道願往生浄土法事讃」に依拠するものである。
 「如法念仏作法」は「如法念仏」「如法念仏法則(ほっそく)」ともいい、念仏を中心に讃を唱え散華を行う勤行作法で、古くは『漢語灯録』『和語灯録』をはじめとして『経任卿記(つねとうきょうき)』『愚管記』などに「如法念仏」に関する多くの記載がある。譜本は、大永6年(1526)書写の上野学園蔵本、永禄3年(1560)の『魚山叢書』所収本、寛政7年(1795)の廬山寺蔵本などがあり、次第・博士ともに同一である。「如法念仏」には「スク」「カナ上」「当り上」「ユリ」「イロ」などの天台宗大原流の旋律型が見られるが、その音構成は明瞭な四度旋法で、大原流ではこの旋法の使用が希有なことを勘案すると、「如法念仏」は大原流の傍系の声明と思われる。
 本願寺派においては、宝暦11年(1761)二尊院の広空書写本が伝えられてから、同年の宗祖五百回忌をはじめ多くの法要で用いられてきた。興正派においては現在も用いられる。

(1)召請偈

原文般舟三昧樂   大衆同心厭三界
三塗永絶願無名 乘佛願力往西方
和訳般舟三昧楽、大衆心を同じくして三界を厭へ。
三塗永く絶えて願はくは名すらなからむ。仏の願力に乗じて西方に往かむ。
出拠善導大師 『法事讃』上巻『真聖全』1・562-12
備考「浄土礼讃儀」の「召請讃」より用いられたもので、『梵唄集』所載の「如法念仏作法」の「召請讃」に相当する。『声明品集』では「下高座文」として用いられた。
譜については「報恩講作法」の「総礼頌」参照


(2)至心礼

原文至心敬礼 南無常住佛
至心敬礼 南無常住法
至心敬礼 南無常住僧
和訳心を至して敬礼し、常住の仏に南無したてまつる。
心を至して敬礼し、常住の法に南無したてまつる。
心を至して敬礼し、常住の僧に南無したてまつる。
出拠善導大師 『法事讃』上巻『真聖全』1・566-4
備考『梵唄集』所載の「如法念仏作法」の「三宝礼」を、譜・本文ともにそのまま依用したもので、『龍谷唄策』の所載の「如法念仏作法」の「三寶礼」とも同じである。詳しくは「報恩講作法」の「至心礼」を参照


(3)三奉請

原文奉請彌陀如來 入道場 散華樂
奉請釋迦如來 入道場 散華樂
奉請十方如來 入道場 散華樂
和訳弥陀如来を請じたてまつる、道場に入りたまえ。
釈迦如来を請じたてまつる、道場に入りたまえ。
十方の如来を請じたてまつる、道場に入りたまえ。
出拠善導大師 『法事讃』上巻「行道讃梵偈」『真聖全』1・575-4
備考『梵唄集』所載の「如法念仏作法」の「三奉請」を、譜・本文ともにそのまま依用したもので、『龍谷唄策』所載の「如法念仏作法」の「三奉請」とも同じである。この譜は『声明品集』にも「三奉請」として用いた例がある。


(4-1)誦讃(甲)

原文四十八願慇懃喚 乘佛願力往西方
無問罪福時多少 心心念佛莫生疑
和訳四十八願慇懃に喚ふ、仏の願力に乗じゅて西方に往かむ。
罪と福と時との多少を問ふことなく、心々に念仏して疑を生ずることなかれ。
出拠善導大師 『法事讃』下巻『真聖全』1・613-1
備考『梵唄集』中「如法念仏作法」の「誦讃」に相当するもので、その「誦讃」中の「行者見已…」の句は現行の乙様に見られるが、この甲様の「四十八願…」等の句は「如法念仏作法」の「散華讃」にあり、後の甲様の「直入弥陀…」等の句は新制のものである。譜は「如法念仏作法」の「誦讃」および「散華讃」に依る。
 「如法念仏作法」では、「頌讃」に続いて「廣懺悔」が入り「念仏」へ続く。


(4-2)誦讃(乙)

原文行者見已心歡喜 終時從佛座金蓮
一念乘華到佛會 即證不退入三賢
和訳行者見をはりて心歓喜し、終る時に仏に従ひて金蓮に坐し、
一念に華に乗じて仏会に到り、すなはち不退を証して三賢に入る。
出拠善導大師 『法事讃』上巻 前行分『真聖全』1・575-12


(4-3)誦讃(甲)

原文直入彌陀大會中 見佛莊嚴無數億
供養冥空諸佛會 大會頂禮別彌陀
和訳直ちに弥陀大会の中に入る。仏の荘厳の無数億なるを見る。
冥空の諸仏会を供養したてまつる。大会頂礼して弥陀に別れたてまつる。
出拠善導大師 『法事讃』下巻 後行分
初2句の後に3句あるが略している。
『真聖全』1・613-9


(5)念佛

原文南无阿弥陀佛  南无観世音菩薩
南无大勢至菩薩 南无清浄大海衆菩薩
和訳
出拠
備考譜は「如法念仏作法」の終わりの「三礼文」に依る。「観無量寿経作法」の「念仏(四句)」を参照
この部分の念仏は、『龍谷唄策』の「如法念仏作法」では「八句念仏(甲)」となっており、『梵唄集』の「如法念仏作法」では「甲念仏・八句念仏(甲)・八句念仏(乙)」となっている。両本とも続いて「略散華・散華讃」が入る。


(6)回向

原文願以此功徳 平等施一切
同發菩提心 往生安樂國
和訳願はくはこの功徳をもつて、平等に一切に施し、
同じく菩提心を発して、安楽国に往生せん。
出拠善導大師 『観経疏』玄義分 「帰三宝偈」終わりの4句 『真聖全』1・442-2/『註釈版』1453-1 
備考『梵唄集』所載の「如法念仏作法」の「願以回向」を、譜・本文ともにそのまま依用したもの。「広文類作法」の「回向」を参照