報恩講作法


 この作法は、明治21年に刊行された本願寺派の声明集である『龍谷唄策』所載の「報恩講作法」に依って作られたもので、第三種として制定された。第一種・第二種は、本山法要に依用するものとして、本山専用の声明集に収められている。
 「報恩講式」と「嘆徳文」を併せて「式歎(しきたん)」と称し、本願寺では当初、報恩講を初め、毎月の宗祖の忌日や歴代宗主の年忌法要にも用いられた。江戸時代には、魚山の幸雄(1625〜1702)が本願寺のために「六道講式」に依って作譜し、「三重の式」と称した。さらに明治15年(1882)、同じく魚山の園部覚秀が改めて作譜したが、現在は二重の重構造をもつ簡略な譜が用いられている。一般寺院で依用する場合は本山の伝授が必要である。大谷派では黙読し、仏光寺では「六道講式」の譜に依るが、下音の箇所がなく中音・乙・二重・三重の四段階の構成となる。また仏光寺では「嘆徳文」は用いず、同派の一般寺院ではこの講式の依用は認められない。興正派では重構造をもたない。高田派では二重の構成となっているが、旋律はほとんど見られず、報恩講の初夜法要で読まれる。木辺派でも二重の構成となっている。

(1)總禮頌

原文稽首天人所恭敬 阿彌陀仙兩足尊
在彼微妙安樂國 無量佛子衆圍繞
和訳天・人に恭敬せられたまふ、阿弥陀仙両足尊に稽首したてまつる。
かの微妙の安楽国にましまして、無量の仏子衆に囲繞せられたまへり。
出拠龍樹菩薩 『十二礼』『真聖全』1・266-3/『註釈版』1441-2
引用善導大師 『往生礼讃』中夜讃『真聖全』1・662-7
備考古くから「報恩講伽陀」として用いられ、『龍谷唄策』所載の「報恩講」には「総礼伽陀」として収められている。博士は「如法念仏」の「召請讃」甲様譜を移したものである。
『龍谷唄策』所載の「報恩講」の「総礼伽陀」は、本文は同じであるが、博士は魚山『六巻帖』の「総礼伽陀」の譜を移したものである。


(2)至心禮

原文至心敬禮 南無常住佛
至心敬禮 南無常住法
至心敬禮 南無常住僧
和訳心を至して敬礼し、常住の仏に南無したてまつる。
心を至して敬礼し、常住の法に南無したてまつる。
心を至して敬礼し、常住の僧に南無したてまつる。
出拠善導大師 『法事讃』上巻『真聖全』1・566-4
備考『龍谷唄策』所載の「如法念仏作法」の「至心礼」乙様を、譜・本文ともにそのまま用いたものである。『龍谷唄策』所載の「如法念仏作法」の「三宝礼」とも同じであるが、この「三宝礼」に際しては「五体投地礼」の作法が見られる。この譜は『声明品集』所載の「至心礼」および『龍谷唄策』所載の「五会念仏略法事讃」の「讃請文」にも見られる。
『龍谷唄策』所載の「報恩講」では、「総礼伽陀」に続いて「唄(始段唄)・中唄・散華」があり、次の「表白・式文(初段)」に続く。

(3)報恩講式(第一段)

原文
和訳
出拠覚如上人 『報恩講私記』 『真聖全』3・655-4/『註釈版』1065-10
備考第3代覚如上人が、永仁3年11月、宗祖三十三回忌に撰述されたものである。全体が三段に分けられ、第一段では「真宗興行の徳」を述べる。


(4)念佛

原文南无阿弥陀佛 南无阿弥陀佛 南无阿弥陀佛 南无阿弥陀佛  
南无阿弥陀佛 南无阿弥陀佛 南无阿弥陀佛 南无阿弥陀佛
和訳
出拠
備考この念仏を「式間(しきあい/しきま)念仏」というが、本願寺派では江戸初期には「坂東曲(ばんどうぶし)」を、元禄二年(1689)以降は「八句念仏」を用いたが、現在は簡略化されている。ちなみに、興正派では「八句念仏」を用い、仏光寺派では「八句念仏」を略した「六句念仏」を用いる。
『龍谷唄策』の「報恩講」では、式文間は「伽陀・念仏(甲)・和讃・念仏(乙)・伽陀」が入っている。


(5)報恩講式(第二段)

原文
和訳
出拠覚如上人 『報恩講私記』 『真聖全』3・657-8/『註釈版』1069-3
備考第3代覚如上人が、永仁3年11月、宗祖三十三回忌に撰述されたもので、第二段では「本願相応の徳」を述べる。


(6)念仏

原文南无阿弥陀佛 南无阿弥陀佛 南无阿弥陀佛 南无阿弥陀佛  
南无阿弥陀佛 南无阿弥陀佛 南无阿弥陀佛 南无阿弥陀佛
和訳
出拠
備考念仏については、(4)念仏を参照。『龍谷唄策』所載の「報恩講」では、式文間は「伽陀・念仏(甲)・和讃・念仏(乙)・伽陀」が入っている。


(7)報恩講式(第三段)

原文
和訳
出拠覚如上人 『報恩講私記』 『真聖全』3・658-14/『註釈版』1071-5
備考第3代覚如上人が、永仁3年11月、宗祖三十三回忌に撰述されたもので、第三段では「滅後利益の徳」を述べる。


(8)念佛

原文南无阿弥陀佛 南无阿弥陀佛 南无阿弥陀佛 南无阿弥陀佛  
南无阿弥陀佛 南无阿弥陀佛 南无阿弥陀佛 南无阿弥陀佛
和訳
出拠
備考念仏については、(4)念仏を参照。『龍谷唄策』所載の「報恩講」では、式嘆間は「伽陀・念仏(甲)・和讃・念仏(乙)」が入っている。


(9)嘆徳文

原文
和訳
出拠存覚上人 『嘆徳文』 『真聖全』3・661-1/『註釈版』1077-1


(10)念仏

原文阿弥陀佛 阿弥陀佛 阿弥陀佛 阿弥陀佛  
阿弥陀佛 阿弥陀佛 阿弥陀佛 阿弥陀佛
阿彌陀佛 阿彌陀佛 阿彌陀佛
和訳
出拠
備考無量寿経作法の「念仏」を参照。漢音で唱えるのは『龍谷唄策』所載の「報恩講作法」の「合殺」に依る。


(11)回向句

原文聞是法而不忘 便見敬得大慶
則我之善親厚 以是故發道意
和訳この法を聞きて忘れず、すなはち見て敬ひ得て大きに慶ばば、
すなはちわが善き親厚なり。これをもつてのゆゑに道意を発せよ。
出拠支婁迦讖訳 『平等覚経』巻二『真聖全』1・100-12
引用宗祖 『教行信証』行巻『真聖全』2・8-5/『註釈版』145-11
備考譜については無量寿経作法の「回向句」を参照。漢音で唱えるのは、『龍谷唄策』所載の「報恩講作法」の「後唄」の読法に依る。