阿弥陀経作法


 この作法は、明治43年に刊行された本願寺派の旧声明集である『梵唄集』所載の「例時作法」に依って作られたものである。
 「例時作法」は、「阿弥陀経」の読誦と念仏を中心に組み立てられた天台宗の日誦作法で、智ギが創した四修三昧(常行・常座・半行半座・非行非座)の常行三昧にあてて修される化他の法義である。常例の作法ということでこの名がつけられた。円仁(794〜864)が唐より帰国後、比叡山に常行三昧堂を建立し、仁寿元年(851)に日本で初めて常行三昧法(例時作法)を行ったのが始まりである。本願寺派においては、天台の「例時作法」に斟酌を加えて、文化年中より依用されるようになったという。

(1)三奉請

原文奉請彌陀如來 入道場 散華樂
奉請釋迦如來 入道場 散華樂
奉請十方如來 入道場 散華樂
和訳弥陀如来を請じたてまつる、道場に入りたまえ。
釈迦如来を請じたてまつる、道場に入りたまえ。
十方の如来を請じたてまつる、道場に入りたまえ。
出拠善導大師 『法事讃』上巻「行道讃梵偈」『真聖全』1・575-4
備考『梵唄集』所載の「例時作法」の「四奉請」の部分に相当するが、「三奉請」として「無量寿経作法」と同じものに改められた。無量寿経作法の「三奉請」を参照


(2)念仏

原文南无阿彌陀佛 阿弥陀佛  阿弥陀佛
和訳
出拠
備考『梵唄集』所載の「例時作法」の「甲念仏」をそのまま依用したもの。元は天台「例時作法」の「甲念仏」の譜を依用したのであるが、天台声明の作法に従えば、本来「甲念仏」は経段の後、つまり(4)の「合殺念仏」の前に入るべきものである。


(3)経段(阿弥陀経)

原文
和訳
出拠鳩摩羅什訳 『阿弥陀経』『真聖全』1・67-1/『註釈版』121-1  
備考『梵唄集』所載の「例時作法」の「経段」を、本文・譜ともにそのまま依用したもので、元の天台「例時作法」の「経段」ともほぼ同じである。


(4)念仏

原文阿弥陀佛 阿弥陀佛  阿弥陀佛 阿弥陀佛  
阿弥陀佛 阿弥陀佛  阿弥陀佛 阿弥陀佛
阿弥陀佛 阿弥陀佛  阿弥陀佛
和訳
出拠
備考『梵唄集』所載の「例時作法」の「合殺」に依る。無量寿経作法の「念仏」を参照


(5)名義段

原文光明無量 照十方國 無所障礙
是故號爲 阿彌陀又 彼佛壽命 及其人民 無量無邊
歸命頂禮 無量壽尊
和訳光明無量にして、十方の国を照らすに障礙するところなし。
このゆゑに号して阿弥陀となす。またかの仏の寿命はその人民に及びて無量無辺なり。
無量寿尊に帰命頂礼したてまつる。
出拠鳩摩羅什訳 『阿弥陀経』『真聖全』1・69-2/『註釈版』123-15
備考『梵唄集』所載の「例時作法」「回向句」の部分に相当し次第取もそのまま行うが、「例時作法」の本文は「天下和順・日月清明・風雨以時・災■不起・国豊民安・兵戈無用・皇帝萬歳・伽藍榮久・佛子安穏・紹隆正法・帰命頂禮・無量壽尊」で、真宗の教義にそぐわないものであった。次第取は、魚山「例時作法」の「回向」に準じてこれを行う。


(6)回向句

原文世尊説法時將了 慇懃付屬彌陀名
衆等回心生淨土 手執香華常供養
和訳世尊の説法、時まさに了りなむとして、慇懃に弥陀の名を付属したまふ。
衆等心を回して浄土に生ぜむとして、手に香華を執りて常に供養したてまつれ。
出拠善導大師 『法事讃』下巻 転経分
本文の初2句と後の2句で、中間は略す。
『真聖全』1・605-2
備考『梵唄集』所載の「例時作法」の「後唄」の譜による。「例時作法」の「後唄」の本文は「處世界如虚空・如蓮華不着水・心清浄超於彼・稽首禮無上尊」である。
無量寿経作法の「回向」を参照