御絵伝・第一幅・第四図
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「御絵伝」第一幅


第四図(六角夢想の図)

 場面は、建仁3年(1203)4月5日の夜寅の時(夜明け4時すぎ)聖人の夢に六角堂の救世(くせ)菩薩(救世観音)が示現したところの六角堂である。二人の聖人が描かれているのは、第三図と同じく動作表現の画法である。
 室内では、白衲(びゃくのう)の袈裟を着け、白蓮華(びゃくれんげ)に端座(たんざ)し給う救世菩薩が、畳に座して合掌される聖人に向かって、
行者宿報設女犯   行者、宿報にてたとひ女犯すとも、
我成玉女身被犯   われ玉女の身となりて犯せられん。
一生之間能荘厳   一生のあひだ、よく荘厳して
臨終引導生極楽   臨終に引導して極楽に生ぜしめん。
の文を示現されている。左側に臥しているのは通夜の人々である。

 続いて、右側の縁に立たれているのも聖人で、東方の山々に群集(くんじゅう)する人々に、救世菩薩の告命(ごうみょう)を説きのべられている。東方の山々には、僧侶から庶民まで老若男女を問わずたくさんの人々が群集している。これは新しい在家仏教へ脱皮し、お念仏が盛んに広まっていくことを示している。

 東本願寺蔵康永本『御伝鈔』は、六角夢想の年次を「建仁三年 辛酉」と干支を違えている。建仁三年の干支は「癸亥」が正しい。