御伝鈔上巻・第五段
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「御伝鈔」上巻


第五段(選択付属又の段)

 黒谷の源空(法然上人)在世の昔、『顕浄土方便化身土文類』(教行信証・化身土巻)によると、「この親鸞は、建仁元年に雑行を棄てて本願に帰し、元久2年(1205)に許可を受け『選択本願念仏集』を書写した。同年初夏中旬、その写本に内題と〈南無阿弥陀仏往生之業・念仏為本〉と〈釈綽空〉という名を、法然上人の真筆で頂いた。同日、空(源空上人)の真影の見写を許された。同2年閏7月19日に、真影の銘に〈南無阿弥陀仏〉と〈若我成仏十方衆生・称我名号下十声・若不生者不取正覚・彼仏今現在成仏・当知本誓重願不虚・衆生称念必得往生〉の真文を頂いた。また、綽空の名を改めて〈善信〉と書き下された。源空聖人(法然上人)が73才の時であった。
 『選択本願念仏集』は禅定博陸(九条兼実)の願いによって書かれたものである。真宗の簡要、念仏の奥義が摂められている。見るものに諭りやすい、たぐい希な御文で、無上の奥深き宝典である。長い年月の間に、法然上人の教えを受けた者は大勢いるが、その見写を許された者は少ない。にもかかわらず、その書写ばかりか、真影の見写まで許された。これは念仏のみ教えのおかげであり、往生決定の徴である。だから、私は、身も心もおどるような感激を込めて、この由来を書きとめているのだ」と。